10月26日|今日は、「文化は地域にとってコストなのか、それとも資産なのか」を考えてみたいと思います。
【今日のニュースから考える|2026年10月26日】
今日は、「文化は地域にとってコストなのか、それとも資産なのか」を考えてみたいと思います。
東京都では現在、「東京文化財ウィーク2026」が開催されています。10月1日から11月30日まで、都内各地で文化財の特別公開、文化財巡り、講座などが行われています。普段見ることのできない文化財も含め、東京に残る歴史や文化を知る機会です。
一方、国の観光政策を見ると、2026年3月に閣議決定された新しい「観光立国推進基本計画」では、観光を日本経済・地域経済の発展を牽引する「戦略産業」と明確に位置づけ、消費額拡大、地方誘客、まちづくりとの連携、新技術の活用を進めています。
この二つを一緒に見ると、これからの地域創生の方向が見えてきます。
文化を「保存する対象」としてだけ見るのではなく、「未来の地域価値を生み出す資本」として見る。
例えば古い神社がある。それだけなら文化財です。でも、なぜそこに建てられたのか。どんな地形や水と関係しているのか。どんな祭りが生まれたのか。地域の暮らしとどう結びついてきたのか。それをガイドが読み解き、地域を歩き、食や自然体験までつなげれば、一つの「滞在価値」になります。
古い道も同じです。昔の街道を保存するだけではなく、歩く。歴史を知る。地域の人と会う。地域で食べる。泊まる。その体験自体が地域産業になります。
文化庁も、文化財を守るだけでなく、上質な体験として活用し、高付加価値化につなげる政策を進めています。つまり、「保存か活用か」ではなく、「活用することで保存できる仕組みをつくる」方向へ社会が動いています。
ここで大切なのは、文化を安易に観光商品化することではありません。
地域の意味を理解する。地域の人と一緒につくる。適正な対価を得る。その収益を文化継承、人材育成、自然環境へ戻す。
文化→体験→経済→継承。
この循環ができれば、観光によって文化が消費されるのではなく、観光によって文化を次世代へ残すことができます。
これは東京の山側を考えると、かなり可能性があります。
御岳山の山岳信仰。高尾山の修験文化。地域の祭り。古道。養蚕。農業。森林文化。川と暮らし。地質。食文化。
これらを「観光スポット」として一つずつ見ると、小さく見えるかもしれません。
でも、
地形
↓
自然
↓
暮らし
↓
信仰
↓
食
↓
文化
という一本の物語として読み解けば、地域そのものが巨大なコンテンツになります。
これからのサスティナブルツーリズムで重要なのは、新しい施設をたくさんつくることではなく、すでにある地域の意味を掘り起こし、現代の価値へ変換することなのだと思います。
そしてAI時代だからこそ、この価値はさらに大きくなると思っています。
文章も画像も情報も、AIによって大量につくれるようになる。一方で、簡単につくれないものがあります。
何百年も続いてきた祭り。その土地だから生まれた信仰。森と水から生まれた食文化。地域の人が身体で覚えている技術。土地の記憶。
時間をかけなければ生まれないものほど、AI時代には希少になる。
だから、「古いから価値が低い」のではなく、「長い時間をかけて形成されたからコピーできない」という見方が必要です。
【今日の問い】
「自分たちの地域にある文化を、“残すべきもの”としてだけではなく、“未来の産業資本”として見たら、何ができるだろう?」
祭りを教育へ。古道をサスティナブルツーリズムへ。農業を食育へ。森林文化を企業研修へ。地域の語り部をガイドへ。地域の知識を次世代の仕事へ。
文化を守るために、経済をつくる。経済をつくることで、文化を守る。
これからの地域創生では、この二つを分けて考えないことが重要になるのではないでしょうか。
日本には、まだ経済価値へ変換されていない膨大な文化資本があります。
そして、その価値を見つけ、編集し、人を育て、体験へ変え、地域に利益を戻せる企業や人材の価値は、これからさらに高まる。
10月26日、東京各地の文化財に光が当たる季節だからこそ、「日本の最大の資源は、地下から掘り出すものではなく、地域に積み重なってきた風土や文化なのではないか」。
そんなことを考えています。
【参考資料】
東京都「東京文化財ウィーク2026」
https://www.koho.metro.tokyo.lg.jp/2026/10/09-moyoshi15.html
観光庁「観光立国推進基本計画」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/kihonkeikaku.html
文化庁「全国各地の魅力的な文化財活用推進事業」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001138.000047048.html
宮入正陽
株式会社 東京山側DMC 代表取締役
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