10月23日|昨日は、「自然・文化という地域資源を、人材育成、教育、観光、企業研修、AIまでつなげられる会社には、これから投資価値が生まれるのではないか」という話を書きました。

【今日のニュースから考える|2026年10月23日】

昨日は、「自然・文化という地域資源を、人材育成、教育、観光、企業研修、AIまでつなげられる会社には、これから投資価値が生まれるのではないか」という話を書きました。

今日は、その先を考えてみます。

社会から必要とされているだけで、本当に投資価値のある会社と言えるのか。

私は、そこには少なくとも「市場」「参入障壁」「再現性」「拡張性」の4つが必要だと思っています。

そして昨日10月21日に発表された最新データは、一つ目の「市場」がかなり大きくなっていることを示しています。

2026年7〜9月の訪日外国人旅行消費額は2兆2,076億円。前年同期比3.2%増。一人当たり旅行支出は23万4,000円で、前年同期比6.1%増でした。

つまり、日本を訪れる人が増えるだけではなく、一人が日本で生み出す経済価値そのものが高くなっている。

観光市場を見る時、「何人来たか」だけを追う段階から、「一人からどれだけ地域価値を生み出せるか」を見る段階へ移っていることが分かります。

そして国は、その消費を東京・大阪・京都だけで終わらせず、地方へ流そうとしています。観光庁は着地消費100万円以上/人の高付加価値旅行者を地方へ誘客するモデル地域づくりを進めています。

環境省も、自然・文化資源を活かし、地域内外の関係者をつなぎながら「持続的に稼げる地域」をつくるコーディネーター・プロデューサー人材の育成を進めています。

ここまでは昨日の話です。

でも投資という視点では、もう一段見る必要があります。


■ ① 市場が伸びても、誰でもできる事業なら投資価値は高くならない

観光市場が伸びている。自然体験需要がある。教育需要もある。AI市場も伸びる。

それだけなら、多くの会社が参入できます。

重要なのは、**「簡単に真似できるかどうか」**です。

地域事業には、実はデジタル企業とは違う参入障壁があります。

地域住民との信頼関係。行政との関係。土地所有者との関係。安全管理の経験。ガイド人材。地域文化への理解。現場で積み上げた失敗と改善。どの季節に何ができるかという一次情報。

これらは、お金を出しても明日手に入るものではありません。

10年間現場にいる会社と、昨日その地域へ参入した会社では、同じAIを使っても出せる答えが違います。

AIによって情報の価値が下がるほど、現場で蓄積された一次情報と信頼関係の価値は上がる。

ここは地域企業にとって非常に重要な参入障壁になると思います。


■ ② 一つの資源から複数の売上を生み出せるか

もう一つ重要なのが、事業の構造です。

例えば、一つの森林がある。

自然体験プログラムとして販売する。子どもの探究学習にする。企業研修にする。ウェルネスにする。サスティナブルツーリズムにする。ガイド育成の研修フィールドにする。自治体向けコンサルティングの実証事例にする。

つまり、一つの地域資源、一つの現場、一つの人材基盤から、複数市場へ展開できる。

これは投資の視点では非常に重要です。

観光だけに依存しない。教育だけにも依存しない。企業研修だけにも依存しない。

でも全部バラバラではなく、「地域資源を価値へ変換する」という共通基盤を使っている。

この構造をつくれれば、一つの市場環境が悪くなっても、別の市場へ展開できます。


■ ③ 東京山側で成功するだけでは、まだ地域企業

ここからが一番重要です。

東京山側で自然体験を成功させる。観光商品をつくる。ガイドを育てる。

それだけなら、優れたローカル企業です。

でも、

東京山側で実証する。
↓
成功と失敗をデータ化する。
↓
方法論を標準化する。
↓
AIで調査・分析・資料作成・商品造成を効率化する。
↓
他地域へ導入する。

ここまでできると、企業の性格が変わります。

「地域で事業をする会社」から、「地域事業の仕組みを販売する会社」へ。

これが全国展開できれば、売上の上限は東京山側の人口や観光客数では決まらなくなります。

北海道でも。

新潟でも。

長野でも。

能登でも。

山梨でも。

九州でも。

地域資源は違う。でも、「資源を調査し、価値を見つけ、人を育て、商品化し、販売し、地域へ利益を戻す」というプロセスには共通部分があります。

ここに再現性があります。


■ ④ AIは、地域企業を「労働集約型」から変えられる可能性がある

地域コンサルティングの弱点は、人が動かないと売上が増えにくいことです。

調査する。会議する。資料をつくる。企画する。現場へ行く。

だから、人を増やさなければ売上も増えない。

でもAIを入れると、この構造を一部変えられます。

地域資源調査を整理する。議事録を解析する。アンケートを分析する。観光商品案を大量に生成する。多言語化する。提案書をつくる。ノウハウをデータベース化する。

人間は、現場を見る。地域の人と関係をつくる。判断する。価値を見つける。

つまり、

現場=人間。
標準化・分析・展開=AI。

という分業ができる。

これが進めば、地域企業でも全国展開可能な生産性を持てる可能性があります。


ここまでつなげると、昨日書いた「投資価値」の意味が少し具体的になります。

市場が伸びている。

国の政策が追い風になっている。

だけではありません。

地域に入り込んで蓄積した一次情報と信頼関係が参入障壁になる。

一つの地域資源を複数市場へ展開できる。

東京山側で得た実践知を標準化して全国へ横展開できる。

AIによって、横展開の限界費用を下げられる可能性がある。

この4つが揃ってくると、地域企業を見る尺度そのものが変わります。


【今日の問い】

「地域企業の企業価値は、“その地域でいくら売っているか”だけで測るべきだろうか?」

私は、それだけではないと思います。

どれだけ再現可能なノウハウを持っているか。

どれだけ簡単に真似できない関係資産を持っているか。

一つの資源からいくつの市場をつくれるか。

他地域へ横展開できるか。

AIによって生産性をどこまで上げられるか。

ここまで見る必要があります。

地域には、自然、文化、歴史、人という巨大な未利用資産があります。

しかし資産は、そこにあるだけでは企業価値になりません。

見つける。編集する。事業にする。人を育てる。収益を生む。標準化する。そして、他地域へ展開する。

この一連を実装できる会社には、従来の「観光会社」「教育会社」「コンサル会社」という分類では説明しきれない企業価値が生まれる可能性があります。

昨日は、「社会が向かう方向と、会社が持つ能力が重なっている」と書きました。

今日は、その先です。

追い風を受ける会社から、追い風を成長へ変換できる会社へ。

これができるかどうかが、本当の意味で投資価値を左右するのだと思います。

10月23日、最新のインバウンド消費データを見ながら、そんなことを考えています。

【参考資料】

観光庁「インバウンド消費動向調査2026年7〜9月期」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_00104.html

観光庁「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/news04_00023.html

環境省「自然を活かす上質なツーリズム 人材育成・地域づくり支援事業」
https://www.env.go.jp/press/press_05545.html

観光庁「宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/page06_00013.html


宮入正陽
株式会社 東京山側DMC 代表取締役

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