10月9日|昨日は、「日本はすでに世界から選ばれている。次は、その追い風を地域までどう届けるか」という話を書きました。

【今日のニュースから考える|2026年10月9日】

昨日は、「日本はすでに世界から選ばれている。次は、その追い風を地域までどう届けるか」という話を書きました。

そして昨日10月8日、観光庁から少し象徴的な発表がありました。「観光地におけるワーキングホリデーを通じた双方向交流の促進事業」の採択結果です。

目的は、外国人旅行者を増やすことではありません。ワーキングホリデー人材を地域で受け入れ、観光地の人手不足を補いながら、地域と海外人材の双方向交流を生み、持続的な人材確保につなげるというものです。

私は、この政策に今の地域観光の大きな変化が表れていると思います。


■ 地域に足りないのは、本当に「観光資源」なのか

日本各地には、すでに十分すぎるほど資源があります。

山。川。温泉。農業。食。祭り。歴史。文化。伝統技術。

でも、それだけで観光産業にはなりません。

旅行者を迎える人がいる。価値を説明する人がいる。予約を受ける人がいる。安全を管理する人がいる。外国語で対応できる人がいる。地域の商品を世界へ売る人がいる。

結局、最後に必要になるのは「人」です。

観光庁が進める高付加価値な観光地域づくりでも、地域の課題は「ウリ」だけではありません。

「ヤド」「ヒト」「アシ」「コネ」。

特に2026年度は、通訳ガイドの発掘・育成や実地研修、交通事業者のサービス向上、海外エージェントとの関係構築など、「人」と「つなぐ機能」への投資がかなり重視されています。

つまり観光政策そのものが、「観光資源をつくる」から「地域を動かせる人をつくる」段階へ進み始めています。


■ AI時代ほど、「経験のある人」の価値が上がる

もう一つ、非常に興味深いニュースがあります。

Reutersが10月7日に紹介した米ADPの分析では、AIは仕事そのものを一気になくすというより、「仕事の中のタスク」を変えているとされています。

そして意外なのは、経験豊富な人材がAI時代でも高い適応力を示していることです。

これは地域でも同じだと思います。

AIは、文章を書ける。翻訳できる。企画書をつくれる。データを分析できる。旅行プランもつくれる。

でも、

今日の川の水位が危険か。

この山道をこの参加者が歩けるか。

この祭りで何を大切に伝えるべきか。

地域の誰に相談すれば話が進むか。

こうした判断は、現場経験がなければ難しい。

AI時代だからこそ、「地域を知っている人」「現場を知っている人」の価値が下がるのではなく、むしろ上がる可能性があります。


■ だから必要なのは「地域人材×AI」

これから強い地域をつくるのは、AIに詳しい人だけでも、地域に詳しい人だけでもないと思います。

地域を深く知り、AIを使える人。

自然を読み、データも読める人。

文化を語り、世界へ発信できる人。

現場で判断し、テクノロジーで仕事を効率化できる人。

私は、こうした人材が地域産業の中心になっていくと思っています。

ガイドも同じです。

案内するだけではなく、自然、安全、文化、顧客対応、地域経済まで理解し、AIを使って情報整理や発信、商品造成までできる。

そうなると、ガイドは「観光の現場スタッフ」ではなく、地域の価値を事業化する人材になります。


■ 世界の高付加価値観光も、「人」を中心に見始めている

高付加価値観光というと、高級ホテルや高級車を想像しがちです。

でも本質はそこではありません。

EYの分析でも、日本が高付加価値化を進めるうえでは、ウェルネス、伝統産業、歴史文化などの強みを深掘りし、「コンテンツ」だけではなく「ヒト」を起点に新しい価値創造を行うことが重要だと指摘されています。

つまり、

高級なものを用意する。

ではなく、

「誰と出会えるのか」。

ここが重要になる。

同じ森でも、誰と歩くかで体験は変わる。

同じ祭りでも、誰から話を聞くかで見え方は変わる。

同じ料理でも、誰が背景を語るかで価値は変わる。

人そのものが、観光資源になる時代です。


そして今、AIには巨額の資金が流れています。

一方で、世界の投資家や政策当局からは、AI投資の過熱や、安全性、投資回収への懸念も出始めています。10月7日にシンガポールで開催された国際会議でも、「AIバブル」への警戒と同時に、人間による統治や責任の重要性が議論されました。

これは観光や地域づくりにもヒントを与えているように思います。

テクノロジーは強力です。

でも、最後に価値を決めるのは、

人がどう使うか。

誰のために使うか。

地域に何を残すか。

です。


【今日の問い】

「地域に必要なのは、観光客を増やすことより、“地域の価値を仕事にできる人”を増やすことではないだろうか?」

自然を知る人。

文化を知る人。

安全を判断できる人。

地域内外の人をつなげられる人。

海外と話せる人。

AIを使える人。

そして、地域資源を事業として組み立てられる人。

こうした人材が地域に増えれば、観光だけではなく、教育、農業、森林、ウェルネス、企業研修、文化継承までつながっていく。

地域の未来を左右するのは、どんな施設をつくるか以上に、「どんな人を育てるか」なのかもしれません。

昨日は、「地域にあるものを世界が理解できる価値へ編集する力」が重要だと書きました。

今日、そこに一つ加えるなら、

その編集を担える人を、地域の中にどれだけ育てられるか。

世界から日本への追い風が強まる今こそ、建物だけではなく、人への投資が重要になる。

今日のニュースを見ながら、そんなことを考えています。

【参考資料】

観光庁「観光地におけるワーキングホリデーを通じた双方向交流の促進事業」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/kobo13_00009.html

観光庁「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/

Reuters「AI at work」
https://www.reuters.com/podcasts/ai-work-2026-10-07/

Reuters「AI投資とリスクをめぐる議論」
https://www.reuters.com/world/asia-pacific/existential-threats-join-bubble-fears-ai-mood-sobers-singapore-forums-2026-10-07/


宮入正陽
株式会社 東京山側DMC 代表取締役

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