11月1日|11月が始まりました。

【今日のニュースから考える|2026年11月1日】

11月が始まりました。今日は少し強い問題提起から、これからの地域創生について考えてみたいと思います。

「予算を使い切ったことは、地域に成果を残したことにはならない。」

全国各地では、今年もさまざまなイベントが開催されています。何十年も続いてきた催しもあれば、新しく始まったものもあります。もちろん、イベントそのものを否定するつもりはありません。

しかし、私は最近、改めて考えています。

そのイベントは、本当に地域に必要だから開催しているのか。それとも、予算がついたから開催しているのか。前年も実施したから、今年も続けているのか。年度内に予算を執行する必要があるから、事業を組み立てているのか。

予算があるからイベントを開催するのか。それとも、地域に実現したい未来があるから予算を使うのか。

この順番は、地域創生を考えるうえで非常に重要だと思います。


イベントが終わると、来場者数、売上、メディア露出などが成果として報告されます。もちろん重要な数字です。

でも、本当に知りたいのはその先です。

地域の人々の関係は深まったのか。新しい仕事が生まれたのか。地域を担う人材が育ったのか。文化や生業は次世代へつながったのか。新しい顧客や市場との関係が生まれたのか。そして、その成果は翌年以降も地域に残るのか。

イベントの成功と、地域創生の成功は必ずしも同じではありません。

一万人を集めたイベントでも、翌日から何も変わらなければ、その賑わいは一日で終わります。

一方で、100人しか参加しなくても、その中から地域のファンが生まれ、次の担い手が育ち、商品が生まれ、継続的な関係ができれば、地域には価値が積み上がります。


毎年同じ予算を使い、毎年同じイベントを開催し、毎年同じような報告書を提出する。

それでも地域が変わっていないのであれば、一度立ち止まる必要があります。

その予算を、地域の担い手を育てることに使えないか。地域の生業を持続可能な事業へ育てることに使えないか。地域文化や自然を次の世代へ継承する仕組みに投資できないか。ガイドを育てられないか。地域の商品をつくれないか。販売ルートを開拓できないか。地域資源を調査し、データとして残せないか。

一回のイベントに使う予算が、考え方を変えれば、地域に何年も残る資産をつくる原資になる可能性があります。

だから必要なのは、「今年は何を開催するか」より先に、「5年後、この地域をどうしたいのか」を決めることだと思います。


私は、祭りとイベントの違いについて考えることがあります。

祭りが終わった時には、どこかに「儚さ」が残ります。

何カ月も準備し、地域の人が一緒に動き、先人から受け継いだものを次の世代へ渡す。そして、終わった寂しさの中に「また来年」という時間が続いている。

そこには、地域に積み重なった時間があります。

一方、開催すること自体が目的になったイベントでは、終わった瞬間に熱気が消え、疲労と経費だけが残ることがあります。

大きな花火を打ち上げれば、その瞬間は華やかです。

でも、花火の大きさと、地域に残る価値の大きさは比例しません。


そして、もう一つ忘れてはいけないのが「人」です。

地域創生に関わる人たち自身が、イベントによって疲弊してはいけないと思っています。

職員。地域事業者。ガイド。実行委員。地域住民。

その人たちの時間、体力、経験、創造力も、地域の重要な資源です。

毎週のようにイベント準備と運営に追われ、本来取り組むべき地域の商品開発、人材育成、販路開拓、自然管理、文化継承が後回しになる。

これでは、本末転倒です。

地域創生に必要なのは、忙しくなることではなく、地域価値が積み上がることです。


だから私たちは、今後、原則としてイベントへの参加・出展を行わない方針としました。

もちろん、地域や事業に持続的な価値を生み出し、明確な戦略的意義がある機会については厳選して参加します。

しかし、慣例だから参加する。声をかけられたから出展する。予算がついたから開催する。「賑わい」をつくるためだけに開催する。そうした判断からは距離を置きます。

その時間と経営資源を、時間とともに価値が積み上がる実践へ振り向けます。


東京山側DMCでは、すでにその方向へ動いています。

地域資源を調査し、歴史・自然・文化・暮らしを一次情報から掘り起こす。

それを、サスティナブルツーリズムの商品に変える。

自然体験を、子どもの探究型学習に変える。

地域の知識を、ガイド育成のカリキュラムに変える。

森林や里山を、企業研修やウェルネスのフィールドに変える。

地域の実践知を、自治体やDMOへのコンサルティングに変える。

さらに、そこで得られたデータやノウハウを、生成AIも活用しながら標準化し、他地域へ展開できる形にしていく。

私たちが目指しているのは、イベントを一つ成功させることではなく、地域の価値が毎年積み上がる構造をつくることです。


例えば、子どもの自然体験スクール。

一日限りの自然イベントとして開催するのではなく、年間を通じて自然に触れ、問いを持ち、地域を知り、少しずつ成長していく仕組みにする。

例えば、ガイド育成。

一回の研修会で終わらせず、現場実習、評価、商品造成、実際のツアー運営までつなげ、地域に「仕事」として残す。

例えば、サスティナブルツーリズム。

一回のモニターツアーで終わらせず、顧客を設定し、価格を決め、販売ルートをつくり、実際に旅行者を受け入れ、改善を繰り返す。

例えば、地域資源調査。

調査報告書を棚に置くためではなく、教育、観光、地域産業、人材育成へ何度も使える「地域資産」にする。

一つの予算、一つの事業、一つの現場から、次の仕事が生まれるようにする。

これが、私たちが考える地域創生です。


ただし、私は「イベント不要論」を言いたいわけではありません。

日々の地域活動がある。人が育っている。商品がある。文化がある。地域産業がある。

その積み重ねを、より多くの人に伝えるためにイベントを使う。新しい市場とつながるために開催する。地域の次の挑戦を始めるために開催する。

そこには、大きな意味があります。

イベントをゴールにするのではなく、イベントを地域の未来へつながる通過点にする。

その違いだと思います。


【今日の問い】

行政、DMO、観光協会、地域事業者、そして私たち自身に問いかけたいと思います。

「その事業が終わった3年後、地域に何が残っていますか?」

人材でしょうか。仕事でしょうか。顧客でしょうか。地域の商品でしょうか。自然でしょうか。文化でしょうか。ノウハウでしょうか。地域外との関係でしょうか。

それとも、「今年も無事に開催できた」という実績だけでしょうか。

地域創生プロデューサーに求められるのは、イベントを開催する能力以上に、イベントがなくても地域の価値が育ち続ける仕組みをつくる能力だと思っています。

予算を消化する。ではなく、予算を地域の未来へ変換する。

一瞬の賑わいではなく、地域に残る価値をつくる。

東京山側DMCも、自分たち自身への問いとして、今後さらにこの姿勢を明確にしていきます。

調査する。価値を見つける。人を育てる。商品にする。販売する。実践する。検証する。そして、次の地域へ展開する。

その循環をつくることに、限られた経営資源を集中する。

11月の始まりに、改めてこの一文を掲げたいと思います。

「予算を使い切ったことは、地域に成果を残したことにはならない。」

一瞬の賑わいより、地域に積み上がる価値を。

それが、これからの株式会社東京山側DMCの実践です。


宮入正陽
株式会社 東京山側DMC 代表取締役

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