10月2日|昨日、観光庁から少し気になる数字が発表されました。
【今日のニュースから考える|2026年10月2日】
昨日、観光庁から少し気になる数字が発表されました。
2026年8月の延べ宿泊者数は6,268万人泊。前年同月比で6.7%減りました。
日本人宿泊者は5.8%減。外国人宿泊者も10.3%減っています。調査方法の変更による影響には注意が必要ですが、「観光客はずっと増え続ける」という前提で地域を考えてよいのか、一度立ち止まって考える材料にはなります。 (国土交通省)
今日は、この「減った」というニュースを、少し違う角度から見てみたいと思います。
■ 観光客が減ることは、本当に悪いことなのか
これまで観光では、
何人来たか。
何泊したか。
どれだけ売上が増えたか。
という数字が重視されてきました。
もちろん大切です。
でも、もし観光客数を増やし続けることだけを目標にすると、どこかで限界が来ます。
混雑する。
自然環境への負荷が増える。
地域住民が疲れる。
働く人が足りなくなる。
価格競争になる。
地域文化が「見せるためのもの」に変わっていく。
だから今、観光政策でも「量」だけではなく、「高付加価値」「持続可能性」「地域への還元」が重視されています。
つまり、
100人来ても何も残らない観光より、
20人が深く地域を知り、泊まり、食べ、地域の人と出会い、また戻ってくる観光。
そちらの方が、地域にとって価値が高い場合があります。
■ これから価値が上がるのは「人が少ない場所」かもしれない
少し逆説的ですが、観光客が集中していないこと自体が、これから価値になる可能性があります。
静かな森。
人の少ない集落。
地域の人と話せる距離感。
観光地化されすぎていない文化。
季節によって変化する自然。
こうしたものは、大量集客とは相性がよくありません。
でも、
自然を深く知りたい。
地域の物語を知りたい。
自分自身を整えたい。
子どもに本物の体験をさせたい。
地域の人から学びたい。
という人にとっては、むしろ大きな価値になります。
「人が少ない」は、弱みではなくなるかもしれません。
■ 環境省も「自然を活かす上質なツーリズム」を進めている
環境省は現在、「自然を活かす上質なツーリズム」の人材育成・地域づくり支援を進めています。
また、9月には第22回エコツーリズム大賞の募集も始まりました。 (環境省)
ここで重要なのは、「自然があるから人を呼ぶ」という発想ではないことです。
自然を理解する。
環境への負荷を抑える。
地域文化を尊重する。
地域経済へ還元する。
そして、その価値を伝えられる人を育てる。
つまり、自然そのものだけではなく、
「自然と人との関係性」
まで含めて観光価値にする方向です。
これは、これからかなり重要になると思います。
■ AI時代だからこそ「現地に行かなければ得られないもの」が強くなる
もう一つ、私はAIの進化とも関係していると思っています。
AIに聞けば、歴史は分かる。
地形も調べられる。
観光地の写真も見られる。
翻訳もできる。
旅行プランまで作れる。
情報だけなら、かなりの部分が自宅で手に入ります。
では、それでも人はなぜ旅をするのでしょう。
風の冷たさ。
川の音。
森の匂い。
土の感触。
地域の人の表情。
一緒に歩いた人との会話。
偶然見つけた生きもの。
その場でしか起こらないこと。
こうしたものは、AIでは代替できません。
情報が豊かになるほど、
「身体を使って得る一次情報」
の価値が上がる。
私はそう考えています。
つまり、今日の「宿泊者数減少」というニュースも、
単純に、
観光が悪くなった。
という話だけではない。
これまでと同じように、人数を追い続ける観光でよいのか。
という問いにも見えます。
【今日の問い】
「観光客を増やすことと、地域を豊かにすることは、本当に同じだろうか?」
100万人が通り過ぎる地域。
1万人が深く関わる地域。
どちらが豊かでしょう。
答えは、地域によって違うと思います。
大切なのは、
何人来たかではなく、
誰が来たのか。
何を感じたのか。
地域に何が残ったのか。
もう一度来たいと思ったのか。
地域の人自身が、その観光を誇れるのか。
これからのサスティナブルツーリズムでは、こうした数字に表れにくい価値を、きちんと測り、伝え、事業にしていく必要があります。
「増やす」だけではなく、
「深くする」。
10月2日のニュースを見ながら、これからの地域観光では、この視点がますます重要になるのではないかと考えました。
地域住民の方へ。
観光客が増えることで、暮らしの中で守りたいもの、変わってもよいもの、地域に残したい価値は何でしょうか。また、観光によって得られる利益や交流が、自分たちの暮らしに実感をもって還元されているでしょうか。
観光事業者の方へ。
来訪者数を増やすこと以外に、地域の自然や文化を守りながら、滞在時間や満足度、地域内での消費、再訪や関係性を深めるために、明日から変えられるサービスは何でしょうか。
旅行者の方へ。
その地域を訪れることで、どんな負担を地域にかけ、どんな価値を地域に返せるでしょうか。混雑していない場所を選ぶ、地域の店で買う、自然や文化のルールを守る、旅の後も地域を応援するなど、自分にできる選択は何でしょうか。
「増やす」だけではなく、
「深くする」。
それぞれの立場から、地域にとって望ましい観光のかたちを考えてみたいと思います。
宮入正陽
株式会社 東京山側DMC 代表取締役
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