農業体験を通じて、子供たちに思いやりと生き抜く力を

西川 佳克 (TOKYO YAMAGAWA GUIDE)

Q:これまでの経歴を教えてください。

福井県出身で筑波大学地球科学専攻を主に勉強し、地形学や古生物による年代特定の研究に従事していました。卒業後は地質コンサルティング企業で、ダム現場や法面工事に携わりました。27歳の時、生命とは何かという素朴な疑問に興味を持ち、身体に直接関わる整体の仕事に就きました。30代後半になり、「生きるとは何か」という疑問の答えを探求し、伝統仏教の寺院で役僧として働きました。この時、修験道も同時に実践しました。答えを探すものではなく、自然な形での暮らしをするために、東京山側で持続可能な農業を推進しています。

Q:東京山側での農業体験について教えてください。

農業体験の場所は、JR武蔵五日市駅から徒歩15分の場所に位置します。この場所は秋川橋河川公園バーベキューランドの向かいで、駐車場もバーベキューランドにありますので、アクセスがしやすい環境です。東京山側DMCでは地域の課題解決を目指しています。この場所の田んぼや畑を学習の場として活用して、耕作放棄地の課題解決に取り組んでいます。

田んぼでは種まきや土起こしから始めて、田植え、稲刈り、脱穀・籾摺りまで一連の作業を体験して頂きます。田んぼの整備や畦塗り、草取りなどの作業にも参加していただくことで、稲作の意味を実感していただけます。

Q:農業体験を通じて子どもたちに学んでほしい、伝えたいことがあれば教えてください。

農業を通じて、子供たちに思いやりや、生き抜く力を身につけて頂きたいと考えています。農作業はチームワークです。みんなで協力し、収穫に向けて役割分担します。時には自然の力にも左右されます。お金を使ってお米を買うのではなく、自分たちでお米を育て、収穫し食べることが生きるというリアルな体験です。自分たちが汗水たらして育てたお米は、格別においしいものです。お金では買えない特別なおいしさです。

Q:当山派修験道を修了されたとのことですが、どのような内容なのでしょうか?

修験道を修めるとは、自然や神仏とのつながりを全身で感じ、自分自身の心を整え、社会に奉仕・還元することだと考えています。修験者は山(神仏の世界)と里(人間社会)を行き来しながら、社会への貢献が求められる存在です。特に私が修行をしていた醍醐寺では、「実修実証」という考え方があり、修行で得たものを現実の社会で実行し、社会に還元することを重視しています。修験道は自己成長と社会貢献を結びつけるものです。

Q:これまでの経験が東京山側のアドベンチャートラベルにつながるのですね。日本の神社仏閣の魅力をどのように伝えていきたいですか?

日本の寺社仏閣や伝統芸能には、古代から続く自然との調和が受け継がれています。現代社会では即物的な価値が主流になっていますが、日本の伝統には自然との調和があり生きる本質を感じることができます。修験道を修めることによって、この自然との調和を伝える仕事をしています。最近では、日本の価値に海外の方々が注目しています。アドベンチャートラベルもその一つであり、体験を通じて日本の精神性に触れ、それを自分の糧にしたいと考えている人々へ真摯な情報を提供したいと思っています。日本の魅力を最大限に引き出す方法として、アドベンチャートラベルは一つの解答です。

Q:最後に東京山側の魅力について教えてください。

東京山側は豊かな自然だけでなく、文化的・歴史的な要素も深く魅力的です。しかし、その魅力はまだ眠っている状態です。例えば、御岳山には御師(おし)集落があり、かつて栄えた武蔵五日市は炭の主要な産地であり、多摩川周辺の山林は木材の供給源として交易を支えていました。この地域には地理的にも文化的にも魅力的なストーリーがあります。これらのストーリーを紐解き、地域の魅力として可視化することで、新たな魅力を生み出すことができると考えています。

西川 佳克(にしかわ よしかつ)

にしにぃ

1973年8月20日、福井県出身。新卒でゼネコンに入社後、26歳で整骨院に転職し開院。身体の不調がマインドに起因することに気づき、37歳で真言宗の寺院に入り、京都醍醐寺で修験道の印信を修了。その後、安全な食品を求めNPO法人で農業経験を積む。東京山側では農業を通して、子供たちに探究型自然体験学習スクールを提供。信条は利他100%の素直な心。目標は、身体、心、食、経済、地域社会に貢献するウェルビーングの実現です。

資格 当山派修験道を修了(真言宗・醍醐寺三宝院、惠印三昧耶・傳燈印信) SNS