10月30日|山の地域では、少しずつ冬支度が始まっています。
【今日のニュースから考える|2026年10月30日】
山の地域では、少しずつ冬支度が始まっています。紅葉が終わり、雪を待つ地域も増えてくる季節です。
でも今日は、あえて「冬」ではなく、来年のグリーンシーズンについて考えてみたいと思います。
地域観光では、ともすると「冬になったら冬の商品を売る」「春になったら春の商品を考える」という動きになりがちです。
しかし、本当に強い地域は、冬の間に次の春、夏、秋をつくっています。
■ インバウンドも「増え続ける」ことを前提にしない
観光庁によると、2026年9月の訪日外国人旅行者数は約310万人。前年同月比では5%減少しました。1〜9月累計も前年同期比2.9%減です。
一方で、23市場のうち7市場では9月として過去最高を記録しています。
つまり、日本全体の観光客数だけを見て一喜一憂するのではなく、「誰に、何を目的に、その地域まで来てもらうのか」を考えることが、ますます重要になっています。
https://www.mlit.go.jp/kankocho/page01_00069.html
スキー客が来る。
紅葉客が来る。
という季節依存だけではなく、「その地域そのものを目的地にする」。
ここが、これからの地域経営の分岐点だと思います。
■ 世界のマウンテンリゾートは、冬に夏を仕込んでいる
以前も書きましたが、日本の山岳地域には世界級の資源があります。
森林。沢。湖。農業。食。地質。野生動物。信仰。祭り。温泉。古道。
しかし、それぞれが「資源」のまま存在している地域も少なくありません。
例えば、冬はスキー場として認知されている地域でも、雪がなくなれば観光が止まる必要はありません。
春は新緑と山菜。
夏は沢、昆虫、森林、農業、トレッキング。
秋は紅葉、食文化、収穫、地質。
さらに、ウェルネス、企業研修、探究学習、サスティナブルツーリズムまで組み合わせれば、同じ山でも一年を通じて異なる市場へ提供できます。
重要なのは、「グリーンシーズンに何を開催するか」ではなく、「この地域で春から秋まで、なぜ滞在するのか」を設計すること。
■ 環境省も、自然資源を「持続的に稼げる地域」へ変える人材を育て始めている
環境省では現在、「自然を活かす上質なツーリズム 人材育成・地域づくり支援事業」を進めています。
対象は国立公園だけではありません。里地・里山などを含め、自然資源を活かした地域振興を目指す地域も対象です。
そして求められているのは、自然に詳しい人だけではありません。
地域内外の人をつなぐ。行政と連携する。来訪者体験を高める。関係人口をつくる。そして、自然を守りながら「持続的に稼げる地域」をつくる。
つまり、地域コーディネーター・プロデューサーです。
https://www.env.go.jp/press/press_05545.html
これは、これからの地域観光に必要な機能をかなり端的に表していると思います。
■ 地域に必要なのは、「新しい観光資源」ではないかもしれない
地域を訪れると、よく「うちには観光資源がない」という話を聞きます。
でも実際に歩いてみると、
地元では当たり前になっている森。
昔から使われてきた水。
独特な地質。
農作物。
地域食。
古い道。
祭り。
生活技術。
地域のおじいちゃん、おばあちゃんが知っている話。
こうしたものがたくさんあります。
問題は「ない」ことではなく、まだ観光・教育・商品として翻訳されていないことなのだと思います。
だから最初に必要なのは、大きな施設をつくることではない。
地域を歩く。
一次情報を集める。
地域の人に話を聞く。
地形や自然を見る。
歴史とのつながりを調べる。
誰に価値があるのかを考える。
そして、初めて商品にする。
例えば、一つの森でも、
外国人旅行者には、ガイド付きの自然文化体験。
企業には、ウェルネスやチームビルディング。
子どもには、探究型自然体験学習。
地域住民には、郷土理解やシビックプライド。
ガイド候補者には、人材育成フィールド。
と、複数の価値へ変換できます。
一つの地域資源から、複数の市場をつくる。
この発想がグリーンシーズンには特に重要です。
そして冬は、そのための準備期間にできます。
11月〜2月に地域資源を調査する。
地域住民へのヒアリングをする。
春のフィールドを下見する。
ストーリーをつくる。
ガイドを育てる。
価格を決める。
安全管理を整える。
販売先をつくる。
春になってから企画を考えるのではなく、春にはすでに「売れる状態」にしておく。
この半年の差は大きいと思います。
観光庁でも現在、自治体・DMO等を対象に、観光地経営の高度化、人材育成、安全・安心、専門家派遣など複数の支援が進んでいます。
つまり国の政策も、「イベントを一つ増やす」より、地域経営、人材、持続可能性を強くする方向へ向いています。
https://www.mlit.go.jp/kankocho/kobo_boshu.html
行政や自治体にとっても、これから重要になるのは「来年度に何のイベントをするか」だけではなく、地域の資源をどう産業化し、その運営を担う人材をどう残すかではないでしょうか。
【今日の問い】
「来年のグリーンシーズンに、自分たちの地域へ来る“理由”を、今いくつ説明できるだろう?」
絶景がある。
ではなく、
なぜ、その景色なのか。
何を体験できるのか。
誰に会えるのか。
何を学べるのか。
何を食べられるのか。
一泊すると翌日何ができるのか。
そして、その旅行によって地域に何が残るのか。
ここまで設計できれば、地域は「観光スポット」から「滞在する目的地」へ変わります。
私たちも東京の山側で、自然体験、サスティナブルツーリズム、ガイド育成、企業研修、地域資源調査などを実際に運営してきました。
そこで感じるのは、地域づくりに必要なのは、立派な企画書だけではなく、現場へ入り、地域資源を掘り起こし、商品にし、人を育て、実際に販売・運営するところまでをつなぐ機能だということです。
冬が始まる10月30日。
雪を待つだけの冬ではなく、来春からの地域産業を仕込む冬へ。
グリーンシーズンは、雪がない季節ではありません。
地域の風土そのものを価値にできる季節です。
これから全国のさまざまな地域と、その可能性を一緒に掘り起こしていけたらと思っています。
【参考資料】
観光庁「10月長官会見要旨」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/page01_00069.html
環境省「自然を活かす上質なツーリズム 人材育成・地域づくり支援事業」
https://www.env.go.jp/press/press_05545.html
観光庁「募集中の支援事業」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/kobo_boshu.html
宮入正陽
株式会社 東京山側DMC 代表取締役
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