10月19日|今日は、地域創生について少し根本から考えてみたいと思います。
【今日のニュースから考える|2026年10月19日】
今日は、地域創生について少し根本から考えてみたいと思います。
地域創生というと、「人口を増やす」「移住者を増やす」「観光客を増やす」という話になりがちです。
でも、人口減少が続く日本で、すべての地域が人口増加を目標にすることは現実的でしょうか。
これから大切なのは、「人の数」を増やすこと以上に、「地域の中を流れる価値」を増やすことではないかと思っています。
10月20日、観光庁は「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり」の中間報告会を開催します。
対象となる高付加価値旅行者は、訪日期間中の着地消費額が一人100万円以上の旅行者です。
ここで重要なのは、「富裕層を呼ぼう」という話だけではありません。
なぜ国が、高付加価値旅行者を地方へ呼ぼうとしているのか。
一人の旅行者が長く滞在する。地域の宿に泊まる。地域の料理を食べる。ガイドを利用する。文化体験をする。地域の商品を買う。
つまり、少ない人数でも、地域の多くの産業へ経済効果を広げられるからです。
地域創生の評価軸が、「何人来たか」から「地域にどれだけ価値が循環したか」へ変わり始めています。
これは観光だけの話ではありません。
例えば森林。
木材だけを売れば、一つの産業です。でも、自然体験教育、ウェルネス、企業研修、生物多様性、ガイドツアー、防災、水源涵養までつなげれば、一つの森林から複数の価値を生み出せます。
農業も同じです。
農産物を出荷するだけではなく、収穫体験、食育、ガストロノミー、企業研修、学校教育、加工品、観光までつなぐ。
文化も同じ。
祭りを開催するだけではなく、歴史を学ぶ。職人を育てる。子どもへ伝える。旅行者に体験してもらう。商品をつくる。
一つの地域資源から、どれだけ多くの価値を生み出し、地域内で循環させられるか。
これが、これからの地域経営では重要になると思います。
そして政府全体でも、考え方が「支出」から「投資」へ変わり始めています。
政府は2040年度までに、AI、半導体、量子、コンテンツなどを中心に官民で370兆円を超える投資を目指しています。
地域創生も同じ発想が必要です。
人口が減っているから支援する。
産業が弱いから補助金を出す。
だけではなく、
「ここへ投資すれば、どんな新しい価値が生まれるのか」
を地域側が示す。
この森林へ投資すれば、教育・健康・観光・環境価値が生まれる。
この文化へ投資すれば、人材・観光・商品・地域アイデンティティが生まれる。
この地域の人材へ投資すれば、ガイド、教育、地域産業の担い手が育つ。
地域を「課題のある場所」として説明するのではなく、「社会課題を解決できるフィールド」として説明する。
ここに、大きな転換があると思います。
さらに最近の観光政策を見ると、その流れがかなり具体的になっています。
廃屋を撤去・再生して温泉地全体の価値を上げる。
ワーキングホリデー人材を地域へ呼び込み、観光人材として地域との関係をつくる。
能登半島では、観光再生を地域復興へつなげる。
宿泊施設には、高付加価値経営や人材、ITへの投資を求める。
これらに共通するのは、観光施設を一つ増やすのではなく、地域を一つの経営体として捉えていることです。
私は、これから地域創生を見る時、「人口」という一つの数字だけでは不十分だと思っています。
地域で生まれた仕事の数。
地域内調達率。
一人当たり地域消費額。
地域で働く専門人材。
再訪する人。
地域外から応援してくれる人。
子どもたちが地域について学ぶ機会。
自然環境へ再投資された金額。
文化を次世代へ伝えられる人。
こうした数字も、地域の豊かさを表します。
人口が減っても、一人ひとりが生み出す価値が高まり、外から人・お金・知識が入り、それが地域内で循環する。
そんな地域は、十分に強い地域になれると思います。
【今日の問い】
「自分たちの地域は、“人を増やすこと”と同じくらい、“一人から生まれる価値を増やすこと”を考えているだろうか?」
観光客を100万人増やす。
移住者を1万人増やす。
もちろん、できれば素晴らしい。
でも、
一人がもう一泊する。
地域の店でもう一食食べる。
ガイドを利用する。
地域の商品を買う。
地域の文化を知る。
また来る。
企業として地域と関わる。
子どもが地域を好きになる。
こうした小さな循環を積み重ねることも、立派な地域創生です。
これからの地域創生は、「人口増加」だけを追う競争から、「地域価値を循環させる力」を高める競争へ。
人を呼ぶ。
価値をつくる。
地域で循環させる。
人を育てる。
自然や文化へ再投資する。
そして、また新しい価値が生まれる。
この循環をつくれる地域が、人口減少時代にも持続できる地域になるのではないか。
10月19日、そんなことを考えています。
【参考資料】
観光庁「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり」
観光庁「宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン」
観光庁「能登半島地震からの復興に向けた観光再生支援事業」
宮入正陽
株式会社 東京山側DMC 代表取締役
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