10月15日|昨日10月14日、観光庁が「宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン」を更新しました。

【今日のニュースから考える|2026年10月15日】

昨日10月14日、観光庁が「宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン」を更新しました。観光庁が強調しているのは、宿泊施設の高級化ではありません。「経営」「人材・労務」「IT」を改善し、収益力を高め、その利益を再投資し、従業員の待遇やサービスをさらに高めるという経営の好循環です。

これは、一見するとホテルや旅館のニュースです。でも私は、地域づくり全体に関係する大きな変化だと思っています。

これから宿泊施設は、「泊まる場所」ではなく、「地域を体験する拠点」になっていく。


例えば、旅行者が地域に2泊するとします。

ホテルで朝食を食べるだけで終わるのか。それとも、朝は地域ガイドと森を歩く。昼は農家で地域食を知る。午後は職人を訪ねる。夕方は温泉へ入る。夜は地域の食材を使った料理を食べ、翌日は別の集落へ行く。

この二つでは、同じ「2泊」でも地域に残る経済価値がまったく違います。

宿泊施設が地域の体験、飲食、交通、文化、自然、ガイドをつなげれば、旅行者の消費はホテルの中だけで終わりません。

宿泊売上が、地域売上になる。

ここが重要です。


観光庁も現在、観光地の高付加価値化について、宿泊施設単体ではなく「地域一体」で進めることを明確にしています。

高付加価値なサービスをつくる。適正な対価を得る。収益を設備や人材へ再投資する。雇用や所得が増える。住民の地域への誇りが高まる。そして、さらに地域の魅力が上がる。

つまり、目指しているのは「高級ホテルを増やすこと」ではなく、観光によって地域経済そのものを強くする循環です。


そして、その循環をつくるために重要になっているのがDXです。

観光庁は、宿泊、体験、予約、決済、移動、購買などのデータを地域でつなぎ、旅マエ・旅ナカ・旅アトまで含めて観光地経営を高度化する方向を示しています。生成AIの活用も今後検討するとしています。

ここまで来ると、観光DXは「ホテルの予約システムを便利にする」という話ではありません。

誰が来たのか。何を体験したのか。どこで食べたのか。何を買ったのか。何に満足したのか。そして、次に何を提案すればもう一泊してもらえるのか。

こうしたデータを地域全体で理解できれば、観光地そのものを一つの事業体のように経営できるようになります。


私は、ここにこれからのDMCの大きな役割があると思っています。

ホテルを運営する必要はない。飲食店を経営する必要もない。農家になる必要もない。

でも、ホテルとガイドをつなぐ。農家と旅行者をつなぐ。文化と教育をつなぐ。森林とウェルネスをつなぐ。交通と体験をつなぐ。そして、それらを一つの商品として販売できるようにする。

地域の中にある別々の産業を、一つの滞在価値へ編集する。

これこそDMCの本来の仕事なのではないでしょうか。


例えば東京の西側でも、可能性はたくさんあります。

立川で地域を知る。あきる野で自然を体験する。八王子で文化に触れる。高尾でウェルネスを体験する。御岳で信仰や山岳文化を知る。青梅で地域の暮らしに触れる。

これらを別々の商品として売るのではなく、「東京のもう一つの2泊3日」として編集する。

宿泊、交通、ガイド、自然体験、食、文化、教育を一つにする。

そうなれば、「東京観光=都心」という常識そのものを変えられる可能性があります。


そして大切なのは、その利益を地域へ戻すことです。

旅行者がお金を使う。ガイドの仕事が生まれる。農産物が売れる。飲食店に売上が生まれる。文化を伝える人に対価が支払われる。その収益から自然環境を守り、次の人材を育てる。

これが回り始めれば、観光は「人を呼ぶ仕事」ではなく、地域の産業を循環させる仕事になります。


【今日の問い】

「自分たちの地域では、“一泊”を地域全体の売上へ変えられているだろうか?」

ホテルだけが儲かる。観光施設だけが儲かる。ではなく、泊まる。食べる。歩く。学ぶ。買う。人と出会う。そして、もう一泊する。

地域全体で旅行者の時間を豊かにできれば、宿泊日数も消費額も自然に増えていく。

高付加価値観光とは、高額商品を売ることではなく、地域全体で価値をつくり、その対価を地域全体で受け取れる仕組みをつくることなのだと思います。

昨日は「都市の商業拠点と地域をつなぐ」という話を書きました。今日は、その旅行者を受け止める地域側について考えてみました。

都市から地域へ。そして地域の中では、宿、食、自然、文化、人をつなぐ。

この二つがつながれば、観光は一過性の集客ではなく、地域経済そのものを強くする産業になる。

10月14日の観光庁の動きを見ながら、そんな可能性を感じています。

【参考資料】
観光庁「宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン」
観光庁「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化」
観光庁「観光DXの推進」


宮入正陽
株式会社 東京山側DMC 代表取締役

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