10月8日|昨日、非常に象徴的なニュースが発表されました。

【今日のニュースから考える|2026年10月8日】

昨日、非常に象徴的なニュースが発表されました。

世界的な旅行雑誌『コンデナスト・トラベラー』米国版の読者投票で、日本が「世界で最も魅力的な国」に4年連続で選ばれました。英国版でも日本は2位です。

これは素直にすごいことです。

でも今日は、少し違う角度から考えてみたいと思います。

日本が世界から選ばれることと、日本の地域が豊かになることは、まだ同じではない。

ここに、これからの大きな伸びしろがあると思います。


■ 「日本に行きたい」は、もう十分に強い

これまでインバウンド政策では、「どうやって日本を知ってもらうか」が大きなテーマでした。

でも4年連続世界1位という結果を見ると、日本という国そのものの認知や憧れは、すでにかなり強い。

問題はその次です。

東京。京都。大阪。富士山。

世界的に知られている場所から、どうやって地域へ人を動かすのか。

そして、地域で泊まり、食べ、人と出会い、文化を知り、お金を使ってもらうのか。

JNTO自身も、地方部の延べ宿泊者数は増えている一方、地方宿泊比率はおおむね30%前後で推移していると整理しています。

つまり、

「日本に来てもらう力」は強い。
でも「地域まで来てもらう力」には、まだ大きな余地がある。

ということです。


■ 高付加価値旅行者が探しているのは、「有名な場所」だけではない

世界の高付加価値旅行市場では、地域の伝統、文化、自然に触れ、自分の知識を深めたり、新しい発見を得たりすることに価値を感じる旅行者が増えています。

JNTOが高付加価値旅行の地域誘致で重要としているのが、

「ウリ」
「ヤド」
「ヒト」
「コネ」
「アシ」

の5つです。

地域ならではの価値。宿泊。ガイドやホスピタリティ人材。海外市場とのつながり。そして移動。

ここで重要なのは、絶景が一つあれば成立するわけではないことです。

地域全体で、

「なぜ、ここへ来るべきなのか」

を設計する必要があります。


■ 世界から見れば、日本の「普通」が希少資源になる

例えば、日本の山間地域にあるものを考えてみます。

清流。森林。農地。神社。寺。祭り。発酵食。昔から続く道。里山。地域の人が持つ自然の知識。

日本で暮らしていると、珍しく感じないものもあります。

でも、世界中を旅している人から見れば、その土地にしか存在しないものかもしれません。

問題は、「あるか、ないか」ではありません。

その価値を、自分たちが理解しているか。

そして、

なぜ価値があるのかを説明できるか。

実際に体験できる形にできるか。

適正な価格をつけられるか。

ここに大きな差が生まれます。


■ そして昨日、もう一つ興味深い政策が発表された

観光庁は10月7日、「廃屋撤去・再生による地方温泉地等のまちづくり支援事業」の採択結果を発表しました。

これも、一見すると建物の話に見えます。

でも本質はもっと大きい。

どれだけ魅力的な自然や温泉があっても、まちを歩いた時に廃屋が並び、景観が荒れ、歩いて楽しい場所になっていなければ、滞在価値は上がりません。

つまり観光政策も、

「目玉コンテンツを一つつくる」

から、

「地域全体の滞在環境を整える」

方向へ進んでいます。

これは昨日まで書いてきたマウンテンリゾートの話とも、完全につながります。


■ これから必要なのは、「宣伝」より「地域編集」

日本は世界で最も魅力的な国として認識されている。

だとすれば、地域側が次にやるべきことは、広告を増やすことだけではありません。

地域資源を棚卸しする。

コアバリューを決める。

自然と文化をつなぐ。

ガイドを育てる。

泊まる理由をつくる。

朝と夜の体験をつくる。

地域内交通を整える。

価格を設計する。

そして、海外の旅行会社やDMCにつなぐ。

つまり、

「知られていないから売れない」のではなく、「旅行者が買える形まで編集されていないから売れない」地域も多い。

ここを変える必要があります。


さらに重要なのは、観光だけで完結させないことです。

旅行者が地域でお金を使う。

そのお金が、農業、林業、飲食、宿泊、ガイド、文化継承、自然保全へ回る。

地域で人が育つ。

また新しい体験が生まれる。

そして次の旅行者が来る。

ここまで循環して初めて、「世界から選ばれる日本」という評価が地域の豊かさにつながります。


【今日の問い】

「日本が世界一魅力的な国なら、自分たちの地域は、その中で何を理由に選ばれるのだろう?」

日本だから来てもらえる時代から、

この地域だから来てもらえる時代へ。

そして、

来てもらうだけではなく、

泊まってもらう。

学んでもらう。

人と出会ってもらう。

地域でお金を使ってもらう。

また戻ってきてもらう。

世界から日本へ向いている大きな矢印を、東京や京都だけで止めず、全国の地域までどう引き込むか。

これからの地域観光で問われるのは、宣伝力よりも、「地域にあるものを世界が理解できる価値へ編集する力」なのだと思います。

世界から日本への追い風は、すでに吹いています。

次に必要なのは、その風を地域の経済、文化、自然、人材育成へどう循環させるか。

今日のニュースを見ながら、そこにこれからの大きな可能性を感じています。

【参考資料】

JNTO「大手旅行雑誌米国版で日本が『世界で最も魅力的な国』に4年連続選出」
https://www.jnto.go.jp/news/press/20261007.html

JNTO「高付加価値旅行を地域にどう呼び込むか?」
https://www.jnto.go.jp/projects/regional-support/resources/3945.html

JNTO「訪日需要を地域の成果へ」
https://www.jnto.go.jp/projects/regional-support/news/3942.html

観光庁「採択結果一覧」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/kobo_saitakukekka.html


宮入正陽
株式会社 東京山側DMC 代表取締役

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